学長メッセージ

2022年度 入学式 学長式辞

新入生の皆様、神戸海星女子学院大学へのご入学、おめでとうございます。ご家族の皆様、誠におめでとうございます。大学を代表して心よりお祝い申し上げます。また、民法の改正により、2022年4月1日から、18歳以上の方が成人とされます。本日成人となられた皆様、重ねてお祝い申し上げます。大学入学と同時に成人になり、責任という言葉も身近に感じておられるかもしれません。

本日、神戸海星女子学院大学の一員となられた皆さんに、本学がどのような大学であるかを理解していただくために、本学の成り立ちと建学の精神、「KAISEIパーソナリティ」、聖書の言葉の順にお話しします。

本学の設立母体は、生涯を教育と福祉の奉仕活動に捧げたフランス人修道女、シスター・マリ・ド・ラ・パシオンが1877年に設立した「マリアの宣教者フランシスコ修道会」という、キリスト教カトリックの女子修道会です。1898年、約1,000人の志願者の中から5人の修道女たちが選ばれ、日本の熊本に派遣されました。その修道女たちに与えられた最初のミッションは、「人々に善を行うために、最初から土地の言葉を学び、日本人のように生活するように努め」ることでした。

修道会は、戦後の日本の復興には女子教育が必要であると考え、1951年、学校法人海星女子学院を設立し、現在のこの地に、小学校、中学校、高等学校を設置しました。そして、1955年に短期大学、1965年に神戸海星女子学院大学文学部英文学科、仏文学科が設置され、以後、いくつかの変遷を経て、2014年に現代人間学部英語観光学科、心理こども学科の1学部2学科体制となりました。

本学の建学の精神は、修道会の創設者シスター・マリ・ド・ラ・パシオンの精神を受け継ぎ、「真理と愛に生きるというキリスト教的価値観に基づき、人を支え、社会に奉仕する女性の育成を目指す」というものです。物質的な価値観に重きを置きがちな今の社会の中で、広い視野を持ち、本当に何が大切かを自問し、人と社会に仕えることのできる成熟した女性を育成することを目指しています。設立当初より、「小規模であることを大切にし」、「託された一人ひとりを 神から愛されたかけがえのない存在として大切にていねいに育て」ること、「困難にあっても希望を失わずに生き抜く精神力をもち、『隣人を自分のように愛する』ことができる人に」育てること、「互いのかかわりを深めながら成長しあい」「知性・感情・意志のバランスのとれたたくましい女性を育てること」を使命としてきました。

この建学の精神に基づき、育んでいってほしい人格的素養として「KAISEIパーソナリティ」というものを定めています。式次第の中に挟んであるオレンジ色のカードをご覧ください。これは、「海星」をアルファベットで綴ったときの6つの文字一つひとつに意味を持たせ、「他者を思いやり、自己を律し、知性と奉仕の精神に富み、正しい倫理観と、豊かな国際感覚をもった女性」に成長してほしいという願いを込めたものです。6つの語の内、「Autonomy 自律」「Intelligence 知性」によって自らを高め、「Ethics 倫理」「Internationality 国際性」によって社会で生きる力を育み、それらのベースとして「Kindness 思いやり」「Service 奉仕」の心を備えていてほしい、と願っています。

また、建学の精神やKAISEIパーソナリティを一言で表現した「人を支え、輝く。」というブランドスローガンがあります。社会の営みにおいては、前に出て引っ張る人と後ろから又は下から支える人との両方が必要です。ある時は支える立場になる人が支えられる立場になる時もあるでしょう。支えるためには、その人がどのような方向からどのような力加減で支えてほしいと思っているかを理解する「思いやり」が必要ですし、それを聞き取るためにはコミュニケーションが必要です。自分を律し支えた上で相手を支える。時には自らを支える。それでいて「輝く」心のゆとりをもてるとしたら、素敵だと思います。

本学では、毎年その年度の聖書の言葉を選んで年間目標としているのですが、本年度の聖書の言葉は、新約聖書の中の「ローマ人への手紙」第12章10節にある「兄弟の愛をもって互いにいつくしみ、進んで互いに尊敬しあいなさい」という言葉です。昨今、メディアには人間の欲が絡む辛いニュースがあふれていますが、私たちは人のことを大切に思い、異なる部分を尊重し受け入れることで、互いに成長していきたいと考えます。

皆さんは、これからの大学生活で「KAISEIパーソナリティ」を身に付けながら、英語観光学科・心理こども学科それぞれの専門分野について学びます。将来の夢が既に決まっている人も、決めるのにまだ時間が必要な人も、これから始まる学びを通して、そして学科を超えた友人や教員とのコミュニケーションを通して、自分に何ができるか、何を大切にしたいか、どのように成長したいかを考えていってください。そして皆さん一人ひとりがここで身に付けたことを、社会のため、ほかの人のため、人を支えるために使ってほしいと願っています。

これまでの2年間、コロナ禍の影響で、クラブ活動・学内行事・普段の生活などにおいて、思うような活動ができず、不自由な思いをしてこられたことでしょう。そのような状況にあってもきっと様々な工夫を凝らし、前に進んでこられたのだと思います。コロナ前のような環境にはすぐに戻らないかもしれませんが、皆さんには、学外活動やクラブ活動、アルバイトや新しい習い事など大学時代だからこそできる様々な経験をしていただきたいと思います。そしてもちろん、学業にも励んでください。大学での新たな学びに対して、興味やモチベーションを高めていくことに不安を感じることもあるかもしれません。新しいことに取り組むとき、真のおもしろさは、その入口では見出しにくいものですし、それを深めようとすれば必ず壁にあたります。

助けが必要になったときは、さきほど代表の方が朗読してくださった、マタイ福音書にある「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。」という言葉を思いだしてください。

この言葉は、イエス・キリストが小高い山の上で弟子達や群衆に語った説教の一節です。キリストは、様々な問題に悩み苦しむ多くの人々を前にして、これらの言葉を告げられました。もちろん「欲しいと言えばなんでもくれる」という意味ではありません。「今、この苦しい時に、本当に必要なものは何だろう?」と問われたのです。この「求めなさい」からの聖書の箇所は、「行動することの大切さを説いている」と考えられます。求め、そして与えられなかったら探しに行く。それでも手に入らなかったら、玄関まで行って扉をたたく。がむしゃらに、でもいいでしょう。そっと、でもいいでしょう。「求める」「探す」「扉をたたく」、それらを継続することが大切なのです。何かを真剣に求めていれば、多少時間はかかっても、あるいは最初に求めていたものと違った形であったとしても、何かと出会えるのではないでしょうか。だから失敗を恐れず、勇気をもって、前に進みましょう。これがこの「山上の説教」の中のキリストの呼びかけです。

「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。」

ときには立ち止まっても構いません。遠回りをすることがあっても構いません。ただ、あきらめずに行動を続けることで、開いている扉を見つけることができると信じています。身近なところでは、ぜひ、先生方の研究室の扉もたたいてみてください。皆さんが本学に在籍する4年の間、夜の大海原を進む舟を照らす星のように、そして約120年前に日本にやってきた5人の修道女たちのように、私たち教職員は皆さんにとっての「海の星」になりたいと思っています。学生の皆さんが私たちにとっての「海の星」になることもあるでしょう。そして卒業後の皆さんには、周りの人たちの行く道を照らす星になっていただきたいと望んでいます。

最後になりましたが、皆さんのこれからの4年間が、それぞれにとって実りのあるものとなりますよう、神様のお導きをお祈りし、皆さんとの、この出会いに心から感謝して、私の式辞とさせていただきます。

2022年4月1日

神戸海星女子学院大学
学長 石原 敬子