学長メッセージ

2023年度 入学式 学長式辞

新入生の皆様、神戸海星女子学院大学へのご入学、おめでとうございます。ご家族及びご列席の皆様、誠におめでとうございます。大学を代表して心よりお祝い申し上げます。

皆さまの中には、本学について何度も読み・聞く機会があった方もおられると思いますが、本日、神戸海星女子学院大学の一員となられた日に、改めて本学院の建学の精神、本学院が大切にしていることについてお話ししたいと思います。

本学院の設立母体は、生涯を「教育と福祉」の奉仕活動に捧げたフランス人修道女、シスター・マリ・ド・ラ・パシオンが1877年に設立した「マリアの宣教者フランシスコ修道会」という、キリスト教カトリックの女子修道会です。シスター・マリ・ド・ラ・パシオンが大切にしていた信念が「真理と愛に生きる」ことでした。

修道会を設立し、活動し始めた時代は、日本では夏目漱石が生きた時代とちょうど重なります。夏目漱石と言えば、「I love you.をどう訳せばよいか?」という問いに対して「月が綺麗ですね、といえばよい」と答えたという逸話がありますが、当時は「LOVE」の概念が、今の日本語の「愛」の意味で一般的に使われるようになるかならないかの時代だったようです。当初キリスト教の宣教師たちによって「LOVE」は「御大切」と訳されたと言われています。つまり、シスター・マリ・ド・ラ・パシオンは、どれだけ時が流れても変わらないであろう真理を探究し、人を大切にする愛に生きた女性なのです。

修道会は、戦後、女子教育が必要であると考え、「真理と愛に生きる」を学院共通の建学の精神として、1951年に学校法人海星女子学院を設立し、現在のこの地に、小・中・高等学校を設置しました。そして、1955年に短期大学、1965年に神戸海星女子学院大学文学部英文科、仏文科が設置され、以後、いくつかの変遷を経て、2014年に現代人間学部 英語観光学科・心理こども学科の1学部2学科体制となりました。

大学の設立当初より「小規模であることを大切に」してきたのは、何より「託された一人ひとりを、愛されるべきかけがえのない存在として大切にていねいに育て」るためです。急速に世の中のAI化が進み、物質的な価値観に重きを置きがちな今の社会においても、対話を通して本当に何が大切かを考え、人と社会に仕えることのできる成熟した女性を育てることを、変わらず目指しています。

建学の精神に基づき、育んでほしい人格的素養として「KAISEIパーソナリティ」というものを定めています。これは、「海星」をアルファベットで綴ったときの6つの文字一つひとつに意味を持たせたものです。

6つの語の内、「Autonomy 自律」「Intelligence 知性」は、自分で決めたルールに則って自らを高める力、「Ethics 倫理」「Internationality 国際性」は、自分と社会との関わりについて理解し社会で生きていく力、そしてそれらのベースとして「Kindness 思いやり」「Service 奉仕」は、人の立場に立って考え行動することのできる力です。これらを4年間、そして卒業後も深めていっていただきたいと思います。

さらに本学では、毎年その年度の聖書の言葉を選んで年間目標としているのですが、本年度の聖書の言葉として、新約聖書の中の「ローマ人への手紙」第12章10節にある「兄弟の愛をもって互いにいつくしみ、進んで互いに尊敬しあいなさい」という言葉を選びました。昨今、メディアには人間の欲が絡む辛いニュースがあふれていますが、学生だけでなく教職員も含め、私たちは、人のことを大切に思い、他者の異なる部分を尊重し受け入れながら、互いに協力し、成長していきたいと思います。

皆さんはこれから、それぞれの学科で又は学科の垣根を越えて専門的に学びます。学びとは、聞いたり読んだりして知識を得るだけでは深まりません。得た知識を基に、自分で考え、適切な場で自分のことばでアウトプットできるようになって初めて、先ほどのKAISEIパーソナリティの中にもあった「知性」と言えるでしょう。

将来の夢が既に決まっている人も、決めるのにまだ時間が必要な人も、これから始まる学びを通して、そして学科を超えた友人や教員とのコミュニケーションを通して、自分に何ができるか、何を大切にしたいか、どのように成長したいかを考えていってください。そして皆さん一人ひとりがここで身に付けた「知性」を、社会のため、ほかの人のため、人を支えるために使ってほしいと願っています。

3年前の春は、コロナ禍に入ったばかりで、皆さんは、学校に行けない、外出も控えなければならない、パソコン等を駆使しなければならない。学校に行くようになっても、行事は制限され、クラスメートの顔も知らない、など、とても不自由で不安な日々を過ごされたことでしょう。それでも、生きていくために人は環境に順応していくもので、丸3年経つとこの生活にも随分と慣れてきました。

そして今、ようやく日常が戻ってこようとしています。今度はその「日常」に順応することに少し時間を要するかもしれませんが、皆さんの大学入学という新しい出発の機会を利用して、ぜひ勇気をもって前進していっていただきたいと思います。

新しいことに取り組むとき、真のおもしろ味は、その入口では見出しにくいものですし、それを深めようとすれば壁にあたるものです。でも、それは私たち教職員も、そしてきっと皆さんの保護者の方々も経験してきたことです。ですから、思い切って新しいことに挑戦してみてください。学業はもちろんですが、学外活動やクラブ活動、アルバイトや習い事など、大学時代だからこそできる様々な経験をしてください。

大学内外での新たな学びの中で、何か不安を感じたとき、助けが必要になったときは、迷わず相談してください。さきほど代表の方が朗読してくださった、マタイ福音書にある「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。」という言葉を思いだしてください。

この言葉は、イエス・キリストが様々な問題に悩み苦しむ多くの人々を前に語った説教の一部です。もちろん「欲しいと言えばなんでもくれる」という意味ではありません。「今、この苦しい時に、本当に必要なものは何だろう?」と問われたのです。この聖書の箇所は、「まず一歩踏み出すことの大切さを説いている」と思います。求め、そして与えられなかったら探しに行く。それでも手に入らなかったら、玄関まで行って扉をたたく。「求める」「探す」「扉をたたく」、それらを継続することが大切なのです。身近なところでは、ぜひ、同じクラスの友だちにそして学科・学年を越えて、学生同士で声を掛け合ってみてください。そして先生方の研究室の扉や職員の部屋の扉をたたいてみてください。ときには立ち止まっても構いません。遠回りをすることがあっても構いません。何かを真剣に求め続けていれば、多少時間はかかっても、あるいは結果が最初に求めていたものと違う形であったとしても、何かと出会えるのではないでしょうか。だから失敗を恐れず、勇気をもって、前に進みましょう。

皆さんが本学に在籍する4年の間、夜の大海原を進む舟を照らす星のように、私たち教職員が一丸となって、皆さん一人ひとりにとっての「海の星」になります。学生の皆さんが私たちにとっての「海の星」になって光を灯してくれることもあるでしょう。そして卒業後の皆さんには、周りの人たちの行く道を照らす星になっていただきたいと思います。

最後になりましたが、皆さんのこれからの4年間が、お一人おひとりにとって実りのあるものとなりますよう、神様のお導きをお祈りし、皆さんとの、この出会いに心から感謝して、私の式辞とさせていただきます。

2023年4月1日

神戸海星女子学院大学
学長 石原 敬子