【教員コラムvol.7】 「2023年度 私のこの1年この一文字」 (心理こども学科 渋谷美智 准教授)

毎年年末に、今年1年間の世相を漢字一文字で表すとどんな漢字になるかという調査を、日本漢字能力検定協会が行っている。世論調査によって一番多い漢字が「今年の漢字」として、その年の一文字になるのだが、1年の出来事を清めるとともに新年が明るい年になることを願い、清水寺にて奉納の儀式を行っている。1年を振り返って選ばれた漢字一字は、その年の世相を表していて、さまざまな出来事を回想することができる。

 2023年度の「今年の漢字」は、『税』だそうである。生活に直結する増「税」・減「税」の動向が注目された1年だった。国民の不安や期待が錯綜したということだ。また2位は『暑』、3位は『戦』、そして4位は『虎』となっていた。2位以下も、なるほどと頷ける漢字が選ばれている。

 因みにこの「今年の漢字」を小中高校生に聞いたところ、1位は『楽』、2位は『推』、3位は『恋』だそうだ。これは、コロナ禍から明けて、いろいろな催しができるようになり、友だちと遊べる、旅行に行けるなど楽しい出来事を経験できたからだろう。2位の「推」は、今流行っている推し活のことで、SNSで発信されるユーチューバーにはまっている小中高校生が多いということで、時代を反映しているのが分かる。

 さて、本校の学生にとっての2023年度1年はどんな1年であったのか、「今年の漢字」とその理由を、1年次生14名と2年次生17名に聞いてみた。

 1年次生では、複数回答があったのが「楽」と「学」であった。あとは「初」「嬉」「推」「変」「繋」「新」「広」「夢」「奏」「美」であった。選んだ字はそれぞれ違うが、選んだ理由については、ほとんど共通するものだった。コロナ禍で、いろいろなことが規制されていた高校生時代から、規制が少なくなり、また更に大学生になったことで行動範囲も広がり、友だちとの交流や推し活の範囲も広がって力を入れられるようになった。また、アルバイトによって、自分の世界の広がりもあり、人との繋がりが以前より濃くなっている。そして大学生になって、専門的なことを学び、漠然としていた夢が現実味を帯びてきていると感じている。その夢を実現させるためにさらに学びを深めていきたいという決意の現れもある。仲のいい友だちができにくかった高校時代と比べ、ほとんどの学生が友だちができたことを喜び、今の大学生活を楽しめている。ただ中には、こんなことが自分に起こるとは予想していなかったと、大学の募集停止について書いている学生もいた。しかしこの逆境を前向きに捉え、何とか大学があるうちに卒業できるよう頑張って勉学に取り組んでいると書いていた。

 2年次生では、複数回答があったのが、「成」「充」で、「成」は成長の成、自分自身の成長をあげている。あとは、「変」「初」「新」「楽」「濃」「推」「夢」「幸」「験」「追」「悩」「怠」であった。2年次生においても、字は違うが、その理由については、同じような内容であった。それは2年次になって参加した実習が、この1年を考えた時に大きく影響しているということだった。将来について、より現実なものとして考える機会になったということだ。夢を実現したいとより強く思い、前向きに捉えている学生もいれば、逆に将来について本当にできるのか不安になった学生もいる。そして、専門的な授業が多くなり、実習に加え、課題提出なども多くなり、また、アルバイトも増えて、いつも何かに追われている状態になってしまったと感じている学生が多かった。将来のことが現実味を帯びてきて、更に勉強に力を入れようという気持ちも、多くの学生が持っている。そして1年次生と同じく、コロナ禍があけ、実習経験だけではなく、2年次生になって、大学内外でのいろいろな活動に参加し、たくさんの経験をして、それぞれに違う学びや成長があったことも挙げられている。もちろん推し活に精を出していた学生もいたようだ。2年次生においては、学校生活もプライベートも充実して思い出が詰まった1年だったようだ。

 2023年4月に、この神戸海星女子学院大学においては、募集停止発表という悲しい出来事があったが、1年次、2年次生は、今ある状況の中で、精一杯大学生活を楽しみ、将来の夢に向かって進んでいるということだ。我々教職員は、そんな学生が最後の最後まで、この海星での大学生活が充実したものとなるよう、できるだけのサポートをしていかなければいけないと改めて思う。