西洋美術史講座(東京)第69回2023年7月23日(日)

「“近代絵画の父”セザンヌ、20世紀絵画を導いた偉大な足跡」
19世紀フランス絵画

講師:佐藤よりこ氏(F6)

ポール・セザンヌ(1839〜1906) 南フランスの古都エクス=アン=プロヴァンスに生まれる。父は帽子の行商から地元 の銀行の経営者となった人でセザンヌに多くの財産を残している。エクスにて10歳の 頃に小説家のエミール・ゾラと知り合う。地元の大学の法学部に入学するが続かず、 ゾラの勧めもありパリの私塾で絵画を学ぶが、馴染めず実家に戻り、父の銀行で働く が再びパリに戻り絵画を学んだ。 初期の絵画はバロック的筆致で塗られた粗野で生々しい絵画であった。サロンには何 度も応募したが認められずにいた。セザンヌはピサロの指導により印象派の影響下の 画家としてキャリアをはじめて、第1回印象派展から出品しているが第4回以降は参加 していない。1882年、アントワーヌ・ギュメの弟子として一度だけサロンに入選して いる。その頃、制作拠点をパリから故郷のエクスに戻している。 セザンヌは描く対象を見えるがままを描くのではなく、複数の視点から捉えられた構 築的な画面構成、色相対比、水彩技法から学んだ手法のカンヴァスの塗り残し、物の 形は小さい色面を貼り合わせて表し、またプーサンの絵画からは様式的古典的絵画の 根本を学ぶなど独特の画風を開拓した。セザンヌの絵画は秩序と調和を保ち、自然の 息吹を失わない永遠性を獲得してポスト印象派となった。後のキュビズムにも影響を 与え、20世紀以降の美術は、セザンヌ抜きでは語れない為、セザンヌを「近代絵画の 父」と呼ぶようになる。サント・ヴィクトワール山などを描いた風景画、水浴図、なじみのある人物の肖像画、果物や陶器など静物画など作品数も多い。

ポール・セザンヌ、首吊りの家、1874年頃、油彩、カンヴァス、55cm×66cm、パリ、オルセー美術館

ポール・セザンヌ、コンポートのある静物、1882年、油彩、カンヴァス、46cm×55cm、個人蔵

ポール・セザンヌ、青い花瓶、1885〜87年、油彩、カンヴァス、61cm×50cm、パリ、オルセー美術館

ポール・セザンヌ、カード遊びの人々、1890〜92年、油彩、カンヴァス、45cm×57cm、パリ、オルセー美術館

ポール・セザンヌ、リンゴとオレンジ、1895〜1900年頃、油彩、カンヴァス、73cm×92cm、パリ、オルセー美術館

ポール・セザンヌ、コーヒーポットを持つ女、1890〜95年、油彩、カンヴァス、130cm×97cm、パリ、オルセー美術館

ポール・セザンヌ、大きな松の木と赤い大地、1895〜97年、油彩、カンヴァス、80×99,6cm、サンクト・ペテルスブルグ、エルミタージュ美術館

左 ポール・セザンヌ、庭師ヴァリエの肖像、1906年頃、水彩、鉛筆、紙、48×31,5cm、ベルリン、国立ベルクグリューン美術館  右 ポール・セザンヌ、庭師ヴァリエの肖像、1906年、油彩、カンヴァス、54,9×65,4cm、ロンドン、テート・ギャラリー

ポール・セザンヌ、大水浴、1906年、カンヴァス、油彩、208×249cm、アメリカ、フィラデルフィア美術館

ポール・セザンヌ、レ・ローヴから見たサント=ヴィクトワール山、1904〜1906年、カンヴァス、油彩、73×91cm、アメリカ、フィラデルフィア美術館