西洋美術史講座(東京)第68回2023年4月23日(日)

「喜びのために絵を描いた画家ルノワールとその他の印象派たち」
19世紀フランス絵画

講師 佐藤よりこ氏 (F6)

ピエール・オーギュスト・ルノワール(1841~1919) フランスのリモージュで生まれる。62年シャルル・グレールのアトリエでも絵を学び、職業画家を目指し、サロンに出品していた。69年、モネと共に制作した陽光の下で移ろいゆく自然を表現した「ラ・グルヌイエール」は、最初の印象派絵画と言わている。普仏戦争以後、サロンでの落選が続き、モネの下で印象派の誕生に期待を寄せていた。第3回印象派展には、ルノワールが大きな達成感を感じて描いた「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」を発表するが、絵は売れずに印象派の手法の限界を感じてサロンへ戻る決心をしている。転機はシャルパンティエ夫妻から依頼を受けた肖像画を描き、しだいに名前が知られて多くの肖像画の依頼を受けるようになる。その後古典主義を学び直し、あたたかで幸福感のある作風となる。レジオン・ドヌール勲章を付与され、国からの依頼を受けて描いた連作「ピアノに向かう娘たち」がある。ルノワールが提示したかったのは心を乱すことない晴れやかで喜びに満ちた世界であった。 カミーユ・ピサロ(1830~1903)農村風景を愛し、ゴーギャンやセザンヌと共にポントワーズ派として知られる。印象派の仲間の対立を調整する役割を果たしており、色彩理論を体系化している。 アルフレッド・シスレー(1839~1899) 裕福なイギリス人の貿易商のもとパリで生まれた。ロンドンに移り住んだ時にターナーやコンスタブルの作品に触れている。雪は特別な存在で白の使用を好んだ。 フレデリック・バジール(1841~1870)経済的に余裕があったバジールは仲間の絵を買ったり自分のアトリエを提供したりしていたが、サロンの審査に不満を抱きグループ展の構想を積極的にあたためていた。しかし普仏戦争で死去し、印象派展には参加できなかった。 ギュスターブ・カイユボット(1848~1894) 上流階級の出身で弁護士資格も持ち、エコール・デ・ボザールでドガと知り合い第2回印象派展から参加している。ルノワールの「ムーラン・ドラ・ギャレットの舞踏会」モネの「サン・ラザール駅」を購入している。 ベルト・モリゾ(1841~1895) ブールジュの裕福な家に生まれる。68年よりマネに絵画を学び、彼のモデルを多く務める。極めて繊細なタッチ、魅力的な速筆で風景の中の人物が光の中から浮き上がってくるような作品を描いている。 メアリー・カサット(1844~1926) アメリカのピッツバーグ州に生まれたアメリカ人。 フランスで活躍し、絵画と版画においてもその才能を発揮している。ドガに勧められ79年の第4回印象派展に出品。日本美術に傾倒し、浮世絵からの手法を取り入れている。 芸術で生計を立てることで自立を果たした女性。

ルノワール、ポン・ヌフ、1872年、カンヴァス、油彩、75×94cm、ワシントン、ナショナル・ギャラリー

ルノワール、新聞を読むクロード・モネ、1873年頃、カンヴァス、油彩、61,7×50cm、パリ、マルモッタン美術館

ルノワール、桟敷席、1874年、カンヴァス、油彩、80×63,5cm、ロンドン、コートールド・ギャラリー

ルノワール、習作(陽光の中の裸婦)、1875年、カンヴァス、油彩、81×65cm、パリ、オルセー美術館

ルノワール、ブランコ、1876年、カンヴァス、油彩、92×73cm、パリ、オルセー美術館

ルノワール、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会、1876年、カンヴァス、油彩、131×175cm、パリ、オルセー美術館

ルノワール、草原の坂道、1876年、カンヴァス、油彩、60×74cm、パリ、オルセー美術館

ルノワール、イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(小さなイレーヌ)、1880年、カンヴァス、油彩、65×54cm、チューリッヒ、ビュールレ・コレクション

ルノワール、ピアノに向かう娘たち、1892年、カンヴァス、油彩、116×90cm、パリ、オルセー美術館

ルノワール、水浴するニンフ、1918〜1919年、カンヴァス、油彩、110×160cm、パリ、オルセー美術館

カミーユ・ピサロ、白い霧、1873年、カンヴァス、油彩、65,5×93,2cm、パリ、オルセー美術館

アルフレッド・シスレー 、ポート・マリーの洪水、1876年、カンヴァス、油彩、60×81cm、パリ、オルセー美術館

フレデリック・バジール、家族の集い、1867年、カンヴァス、油彩、152×230cm、パリ、オルセー美術館

ギュスターヴ・カイユボット、床削り 、1875年、カンヴァス、油彩、102×146,5cm、パリ、オルセー美術館

ベルト・モリゾ、揺り籠、1873年、カンヴァス、油彩、56×46cm、パリ、オルセー美術館

メアリー・カサット、桟敷席、1878年、カンヴァス、油彩、81.3×66cm、アメリカ、ボストン美術館