西洋美術史講座(東京)第67回 2023年1月22日(日)

「印象派の中の印象派、本質を貫いたモネ、移りゆく時の流れ」
19世紀フランス絵画
講師:佐藤よりこ氏 (F6)

クロード・モネ(1824~1926) モネは、フランスにおいて戸外で油彩絵画を最初期に制作したブーダンとヨンキントから油彩の技法や戸外での風景画の制作態度を教えられた。アカデミーに反抗しながらも1865年に初めてサロンに入選するが、徐々に筆触分割を確立してゆき、1869年の「ラ・グヌイエール」においては光が波に反射している様子を生き生きと伝えている。1870年には普仏戦争の兵役を逃れるためロンドンへ行き、ターナーやコンスタブルの作品に感銘を受けた。1874年第1回印象派展に出品した「印象 日の出」は侮蔑され否定された。1876年には日本の浮世絵に影響された「ラジャポネーズ」、1887年には水面を真上から描いた「舟遊び」を発表したが、その構図は「睡蓮」の連作へと繋がることとなった。モネは絵具を混ぜるのではなくカンヴァスに並列に置き、網膜上で色が混ざって色彩を認識する色彩分割を行い、印象主義の画風を確立した。 モネの 連作には「積み藁」「ポプラ」「ルーアン大聖堂」があり、どれも絶え間ない光の変化を描き分けている。これらの連作によって評価を得てジヴェルニーに広大な土地と睡蓮の咲く水の庭園を手に入れた。連作「睡蓮」では五感に響く永遠性をも獲得している。首相のクレマンソーの要請によってオランジェリーの「睡蓮」連作は完成し、第二次世界大戦後オールオーバー・ペインティングを行ったアメリカの若手の画家たちによって新たに「環境芸術」として大きな評価を得ることとなった。オランジェリーは改修工事を経て2006年にはモネが夢見た自然光で鑑賞出来る展示になっている。素晴らしい作品と共に、印象派にとっての革新性(筆触分割、色彩分割、大気の描写)を一貫してやり続けた画家モネを学びました。

 

ウジェーヌ ・ブーダン、ドーヴィルの海水浴の時間、1865年、板、油彩、34,7×57,5cm、ワシントン、ナショナル・ギャラリー

ヨンキント、セーヌ河岸、1862〜63年、紙、水彩、27×49,1cm、ロッテルダム、ボジマンス・ヴァン・ビューニンゲン美術館

 

クロード・モネ、ラ・グルヌイエール、1869年、カンヴァス、油彩、75×100cm、ニューヨーク、メトロポリタン美術館

クロード・モネ、カササギ、1869年、カンヴァス、油彩、89×130cm、パリ、オルセー美術館

クロード・モネ、印象・日の出、1872〜73年、カンヴァス、油彩、48×63cm、パリ、マルモッタン美術館

モネ、散歩、日傘をさす女性、マダムモネと息子、1875年、カンヴァス、油彩、100×81cm、ワシントン、ナショナル・ギャラリー

クロード・モネ、サン・ラザール駅連作、1877年

 

クロード・モネ、積み藁連作、1890〜91年

 

クロード・モネ、ポプラ連作、1891年

クロード・モネ、ルーアン大聖堂連作、1892〜94年