学長メッセージ

2021年度 入学式 学長式辞

新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。ご家族の皆様、誠におめでとうございます。大学を代表して心よりお祝い申し上げます。

新入生の皆様が、本学での4年間を通じて、他者を思いやり、自己を律し、正しい倫理観と豊かな国際感覚を備え、社会に奉仕することのできる女性として成長できるよう、全力で支援することをここにお約束いたします。

新しい環境で、新しい仲間と、新しい学びを始めようとしておられる皆さんの胸の奥には、不安はもちろん、いろいろと挑戦してみたいことがあると思います。おそらく共通して言えることは、皆さんが、自分の可能性を見つけ広げるためにここに来られたであろう、という点です。まずは、そのことをしっかりと心に刻み、今日、4月1日を、神戸海星女子学院大学での大学生活を実りあるものにしよう、と心の中で宣言する日としていただきたいと思います。

今日から、この神戸海星女子学院大学の一員となられる皆さんに、本学がどのような大学であるかを理解していただくために、本学の成り立ち、建学の精神、「KAISEIパーソナリティ」、聖書の言葉の順にお話しします。

まず、本学の成り立ちについてお話しいたします。本学は、キリスト教のカトリックの大学です。本学の設立母体は、生涯を教育と福祉の奉仕活動に捧げたフランス人修道女、シスター・マリ・ド・ラ・パシオンが1877年(明治10年)に設立した「マリアの宣教者フランシスコ修道会」というカトリックの女子修道会です。1898年(明治31年)、この修道会の5人の修道女たちは、キリストの愛について伝えるために、日本に派遣されました。修道女たちに与えられた最初のミッションは、「人々に善を行うために、土地の言葉を学び、日本人のように生活するように努め、熊本のハンセン病患者の方々へのお世話」をすることでした。以来、現在に至るまで、日本で約300名のシスターが教育や福祉の分野で活動を続けています。

マリアの宣教者フランシスコ修道会は、1946年(昭和21年)、第2次世界大戦直後の日本の復興には女子教育が必要であると考え、戦争で大きな痛手を受けた、海星女子学院の前身である高等聖家族女学校の経営を引き継ぎ、1951年、学校法人海星女子学院を設立し、現在のこの地に、小学校、中学校、高等学校を設置しました。そして、1955年に、短期大学、1965年に、神戸海星女子学院大学文学部英文学科、仏文学科が設置されました。以後、いくつかの変遷を経て、2014年に、現代人間学部英語観光学科、心理こども学科となり、昨年2020年12月に大学創立55年を迎えました。

次に、本学の建学の精神についてお話ししたいと思います。本学の建学の精神は、「真理と愛に生きるというキリスト教的価値観に基づき、人を支え、社会に奉仕する女性の育成を目指す」というものです。物質的な価値観に重きを置きがちな社会の中で、人間についての理解を重ねていくうちに、精神的なものの価値の重要性に目を開き、広い視野を持ち、人と社会に仕えることのできる成熟した女性を育成することを目指しています。

これは、シスター・マリ・ド・ラ・パシオンの精神を受け継いだもので、「小規模であることを大切にし」、「託された一人ひとりを 神から愛されたかけがえのない存在として大切にていねいに育て」ること、「困難にあっても希望を失わずに生き抜く精神力をもち『隣人を自分のように愛する』ことができる人に」育てること、「互いのかかわりを深めながら成長しあい」「知(性)・(感)情・意(志)のバランスのとれたたくましい女性を育てること」を使命としてきました。

このような女性に、と目標とするところをお話ししましたが、この「女性」のモデルとなるのが、キリストの母である聖母マリアです。本学の名前にある「海星」、ラテン語でStella Marisとは、聖母マリアの愛称です。その昔、まだ機械技術が発達していなかったころ、夜の大海原を進む舟は、星を目印として航海していました。人生という旅路を小さな舟で航海する私たちは、嵐で方向を見失いそうになることもあるでしょう。そのとき、「海の星」として夜空に輝く星のように、聖母マリアがその船路を導いてくださることを表しているのです。皆さんが本学に在籍する4年の間、私たち教職員も、皆さんにとっての「海の星」になりたいと思っていますし、時には学生の皆さんが私たちにとっての「海の星」になるでしょう。そして卒業後の皆さんには、周りの人たちの行く道を照らす星になっていただきたいと望んでいます。

本学では、建学の精神等に基づき、「KAISEIパーソナリティ」というものを定めています。これは、卒業生全員に求められる共通の人格的素養です。式次第の中に挟んであるカードにある「KAISEIパーソナリティ」をご覧ください。「海星」をアルファベットで綴ったときの6つの文字一つひとつに意味を持たせたものが「KAISEIパーソナリティ」(海星が育てる人格的素養)です。

それぞれ、「Kindness 思いやり」、「Autonomy 自律」、「Intelligence 知性」、「Service 奉仕」、「Ethics 倫理」、「Internationality 国際性」を表しています。本学に入学した学生に、この6つを併せ持った女性、すなわち、「他者を思いやり、自己を律し、知性と奉仕の精神に富み、正しい倫理観と、豊かな国際感覚をもった女性」に成長してほしいという願いを込めています。

また、本学には、「人を支え、輝く。」というスローガン(標語)があります。このスローガンを打ち出して10年目になるのですが、当初、「人を支える」という部分が地味だ、と感想を述べた方がおられました。今の時代、「支える」よりも「前に出て引っ張る」でしょう、と言われたのです。私は必ずしもそうは思いません。人を支えるときに、力任せで支えようとすると、相手が倒れてしまうかもしれません。人を支えるためには、その人がどのような方向からどのような力加減で支えてほしいと思っているかを聞き取り、理解する「思いやり」が必要ですし、自分がまずは自分を律し、支えることができていないと相手を支えることなどできません。それでいて「輝く」心のゆとりをもてるとしたら、なんて素敵なことだろう、と思います。

皆さんは、これからの4年間で「KAISEIパーソナリティ」を身に付け、英語観光学科では、英語、観光、あるいは英語教育について、心理こども学科では、心理学、保育、幼児教育、あるいは児童教育について学びますが、本学では、皆さん一人ひとりがここで身に付けたことを、社会に出て、誰かほかの人のために、人を支えるために使ってほしいと願っています。

4年間は、長いようであっという間です。皆さんには、クラブ活動やアルバイトなど、様々なことを楽しんでほしいと思いますが、大学に進学したからには、学生生活の中心となる学業において、まだ知らない自分の可能性を見つけるように意識してみてください。その過程には、乗り越えるべき壁があり、くじけそうになったり、失敗したりすることもあるでしょう。

そのような中で、助けが必要になったときは、さきほど代表の方が朗読してくださった、マタイ福音書にある「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。」という言葉を思いだしてください。

この言葉は、様々な問題を抱えて悩み、苦しんでいる弟子や民衆に対してイエス・キリストが語った説教の一部です。「今、この苦しい時に、本当に必要なものは何か?」と問い、求め、与えられなければ探し、それでも手に入らなければ、玄関まで行って扉をたたきなさい、と伝えています。

この聖書の箇所は、「行動することの大切さを説いている」と考えられます。がむしゃらに、でもいいでしょう。クールに、でもいいでしょう。自分が信じたものに向かって、貫き進む姿勢もまた、内なる自分を磨くことになると思います。「求める」、「探す」、「扉をたたく」、それを継続することが大切なのです。何かを真剣に求めていれば、多少時間はかかっても、あるいは最初に求めていたものと違った形であったとしても、何かと出会えるのではないでしょうか。

自分のためだけではなく、自分以外の誰かのためにも「求め」、「探し」、「扉をたたく」行動を続けていけば、大きな喜びを手に入れることができると思います。

「天の父は、求める者に良い物をくださるにちがいない。」だから失敗を恐れず、勇気をもって、前に進みましょう。これがこの「山上の説教」の中のキリストの呼びかけです。

皆さんが入学したこの大学は、「超小人数教育」を実践している大学です。超小人数だからこそ可能な、一人ひとりを大切にする本学の教育を大いに活用してください。勉強でわからなくなったり、壁にぶつかったりしたとき、あるいは、進路について悩んだりするとき、人間関係で悩むとき、「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。」という言葉を思い出して、今自分の目の前にある扉とは別の扉をたたいてみてください。

アメリカの教育者であり社会福祉活動家であったヘレン・ケラーは、「ひとつの幸せの扉が閉じるとき、もう一つの扉が開く。」という名言を残しています。
落ち込んだ時には、そんなことに気づく余裕はない、と思うかもしれません。でも、ヘレン・ケラーは次のように続けています。「私たちは、とかく閉じた扉ばかりに目を奪われ、開いた扉に気がつかない。」

ときには立ち止まっても構いません。遠回りすることがあっても構いません。ただ、あきらめずに行動を続けることで、開いている扉を見つけることができると思います。身近なところでは、ぜひ、先生方の研究室の扉もたたいてみてください。
最後になりましたが、皆さんのこれからの4年間が、心身ともに健康に恵まれた充実したものとなりますよう、神様のお導きをお祈りし、皆さんとの、この出会いに心から感謝して、私の式辞とさせていただきます。

 

令和3年4月1日
神戸海星女子学院大学 学長 石原 敬子