学長メッセージ

2020年度 新入生オリエンテーション 学長メッセージ

おはようございます。学長の小野礼子です。新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。

本来ならば、今日は、入学式が行われる予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大が日に日に深刻化していく中で、皆さんの健康と安全のため、そして感染拡大の防止策として、開催を断念せざるを得ませんでした。その代わりとして、今日から、この神戸海星女子学院大学の一員となられます皆さんに、私からメッセージを送りたいと思います。

新型コロナウイルスの感染拡大がいつ終息するかまったくわからないこの状況の中で、私たちは、感染しない、感染させないことを目指して、密閉、密集、密接を避けるために人との距離を開けて、健康のための物理的な「壁」を作って、私たち一人ひとりが細心の注意を払わなければなりません。けれども決して、心の「壁」は作らないようにしましょう。心の「壁」を作ってしまうと、このようなことになったのは、誰のせいだ、とか、誰が悪い、とか言って「悪者」を作ってしまい、それは、差別へとつながります。ですから、わたしたちは、世界中の国々、世界中の人々が心の壁を作らずに、正しい情報を共有して協力し合ってこの試練を乗り越えることを願い、感染拡大防止のために自分に今できるベストのことを考え、行動するように努めしましょう。

さて、ここでは、神戸海星女子学院大学がどのような大学であるかを、本学の成り立ち、本学の建学の精神と「KAISEIパーソナリティ」、本年度の聖書の言葉、の順にお話ししたいと思います。

まず、本学の成り立ちについてお話しいたします。昨年の11月にカトリックの総本山であるバチカンからローマ教皇フランシスコが日本を訪問されました。そして、11月25日に総理大臣官邸で行われた「要人及び外交団等との集い」には、カトリック大学である本学も招待され、フランシスコ教皇のお話を、同時通訳を介してではありますが、間近でお聴きすることができる機会をいただきました。このように、本学は、キリスト教のカトリックの大学です。

本学の設立母体は、「マリアの宣教者フランシスコ修道会」というカトリックの女子修道会です。修道会の名前にある、マリアとはイエス・キリストの母マリアであり、フランシスコとは、教皇のお名前でもある、アシジの聖フランシスコです。ちなみに、本学の正面玄関左にオオカミと一緒にいるフランシスコの像があります。この修道会は、フランス人の修道女、シスター・マリ・ド・ラ・パシオンによって1877年に設立され、1898年(明治31年)、熊本のハンセン病患者の世話をするために20代半ばのフランス人とカナダ人の5名のシスターを日本に派遣しました。シスターたちは、熊本の人々に受け入れられるように一生懸命日本語を学び、日本の風習を学び、ハンセン病患者の人々のお世話を献身的に行いました。それ以来、現在に至るまで、日本で約300名のシスターが教育や福祉の分野で活動を続けています。

マリアの宣教者フランシスコ修道会は、1946年(昭和21年)、第2次世界大戦直後の日本の復興には女子教育が必要であると考え、戦争で大きな痛手を受けた、海星女子学院の前身である、高等聖家族女学校の経営を引き継ぎ、1951年、学校法人海星女子学院を設立し、現在のこの地に、小学校、中学校、高等学校を設置しました。1952年には、神戸海星女子学院マリア幼稚園を西宮市に設置しました。そして、1955年に、短期大学、1965年に、神戸海星女子学院大学文学部英文学科、仏文学科が設置されました。以後、いくつかの変遷を経て、2014年に、現代人間学部英語観光学科、心理こども学科となり、今年の12月が来ると大学創立55年になります。

次に、本学の建学の精神についてお話ししたいと思います。本学の設立母体「マリアの宣教者フランシスコ修道会」の創立者シスター・マリ・ド・ラ・パシオンは、「真理と愛に生きる」という言葉を旨に、生涯を教育と福祉の奉仕活動に捧げました。シスター・マリ・ド・ラ・パシオンの精神を受け継ぎ、本学は、建学の精神を「真理と愛に生きるというキリスト教的価値観に基づき、人を支え、社会に奉仕する女性の育成を目指す」としています。「真理と愛に生きる」という真理とは、神の言葉、すなわち、イエス・キリストの言葉です。そして、愛は、キリスト教で最も大切なことであり、キリスト教をひと言で表すと、愛になります。配布資料の中に、この建学の精神が書かれた小さなブランディングカードが入っています。後でぜひ見てください。

本学では、卒業生全員に求められる共通の人格的素養として「KAISEIパーソナリティ」を定めています。この「KAISEIパーソナリティ」についても、お話ししたいと思います。入学式のために用意していた式次第の中に挟んである「KAISEIパーソナリティ」のカードをご覧ください。「海星」をアルファベットでつづったときの6つの文字一つ一つに意味を持たせたものが「KAISEIパーソナリティ」(海星が育てる人格的素養)です。KAISEIのKは、「Kindness 思いやり」、A は、「Autonomy 自律」、Iは、「Intelligence 知性」、Sは、「Service 奉仕」、Eは、「Ethics 倫理」、Iは、「Internationality 国際性」を表しています。本学に入学した学生に、この6つを併せ持った女性、すなわち、「他者を思いやり、自己を律し、知性と奉仕の精神に富み、正しい倫理観と、豊かな国際感覚をもった女性」に成長してほしいという、本学の願いを込めたものが、この「KAISEIパーソナリティ」です。この中の最初に「Kindness思いやり」が来ているのは、偶然とはいえ、大きな意味があると思っています。それは、この「思いやり」こそが、本学の建学の精神にある「真理と愛に生きる」の愛の一つの形であるからです。この「思いやり」があってこそ、ほかの5つ、すなわち、「自律」「知性」「奉仕」「倫理」「国際性」が生きてくると思うのです。たとえば、3番目の「Intelligence知性」ですが、知性はよいことにも、悪いことにも使うことができますが、思いやりを伴う知性こそが、本学が育てる知性です。また、その次の「Service 奉仕」について考えてみましょう。先ほどお話したように、本学の設立母体、マリアの宣教者フランシスコ修道会は、教育と福祉の奉仕活動を続けている会です。したがって、「奉仕」もまた、「KAISEIパーソナリティ」の構成要素の中で非常に大切なものですが、「思いやり」のない奉仕は、真の奉仕とは言えないでしょう。このように、「Kindness思いやり」が「KAISEIパーソナリティ」の最初に来ていることは、とても意味深いことであると思います。

もう一つ、本年度の聖書のことばについてお話ししたいと思います。式次第の中に挟んである「今年度の聖書の言葉」と書かれたカードをご覧ください。本学では、毎年、その年度の聖書の言葉を選び、学内に掲示しています。本年度の聖書の言葉は、コリントの信徒への手紙一13章13節にある「信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である。」という言葉です。「信仰」とは、信じて尊ぶこと、信じて敬うこと、です。つまり、この宇宙を創造された神様を信じ、自分は神様に命をいただいたこと、神様から愛されていることを信じ、自分の親はもちろんいますが、それを超えて、神様は私たち人類の父親であり、私たち一人ひとりの父親であると思い、父親のように神様を信じ、敬い、うれしいことが起こったときは、神様に感謝し、苦しいこと、つらいこと、悲しいことが起こったときには、これにはきっと何か意味があるに違いない、と考え、絶望することなく困難を受け止め、神様になぐさめや助けを求めて祈る、神様にいつも心を向けて、神様が発しておられるメッセージを心の中で聞こうとしたり神様に祈ることで語りかけたりする、そういうことが信仰だと思います。希望は、わかると思います。そして、愛は、先ほど、本学の建学の精神やKAISEIパーソナリティのお話でも出てきましたが、キリスト教を一言でいうと愛であり、KAISEIパーソナリティの「Kindness思いやり」は、愛の一つの形です。ちょうど今、新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界中が困難な状況にあります。新型コロナウイルスに感染して重症の方々は、苦しい中で家族とも会うことができません。また、亡くなった方の遺族の方たちは亡くなった方に一度も会わせていただけないまま、お別れをしなければなりません。このような苦しみ、悲しみを抱えなければならない人を増やさないように、愛、つまり思いやりの心で、感染させない、感染しないように努めましょう。そして、神様が私たち人間を愛してくださっていることを信じ、希望をもって、互いに思いやりの心をもって助けあえば、きっと世界はこの困難から立ち上がることができると信じましょう。今年度の聖書の言葉はこのことを教えてくださっていると思います。

最後に、式次第に書かれているマタイ福音書の言葉を皆さんに向けて読みたいと思います。

 

マタイ福音書 第7章 7~12

 

求めなさい。そうすれば、与えられる。

探しなさい。そうすれば、見つかる。

門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。

だれでも、求める者は受け、

探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる。

 

あなたがたの天の父は、

求める者に良い物をくださるにちがいない。

だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、

あなたがたも人にしなさい。これこそ律法と予言者である。

 

皆さんが入学したこの大学は、「超小人数教育」を実践している大学です。超小人数だからこそ可能な、一人ひとりを大切にする本学の教育を大いに活用してください。勉強で一生懸命がんばっている中でわからなくなったり、壁にぶつかったりしたとき、あるいは、進路について悩んだりするとき、この言葉の最初にある「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。」という言葉を思い出して、先生方の研究室のドアをたたいてください。先生方は、喜んでドアを開き、喜んで助けてくださることでしょう。

最後になりましたが、皆さんのこれからの4年間が、心身ともに健康に恵まれた充実したものとなりますよう、神様のお導きをお祈りし、皆さんとのこの出会いに心から感謝して、私からのメッセージとさせていただきます。

 

2020年4月1日

神戸海星女子学院大学

 学長 小野礼子