学長メッセージ

2018年度 入学式 学長式辞

晴れ渡った青空のもと、桜の花がこの日のために咲き続けてくれているようです。あちこちの木々が薄緑色の小さな葉をつけ始め、生命の息吹を感じる季節となりました。今日、このように入学式を迎えることができ、大変うれしく思います。

新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。ご家族の皆様、誠におめでとうございます。

新入生の皆さんは、今日から、この神戸海星女子学院大学の一員となられます。そこで、神戸海星女子学院大学がどのような大学であるかを、本学の成り立ち、本学の建学の精神と「KAISEIパーソナリティ」、そして、本年度の聖書の言葉、の順にお話ししたいと思います。

まず、本学の成り立ちについてお話しいたします。本学は、キリスト教の、カトリックの大学です。本学の設立母体は、「マリアの宣教者フランシスコ修道会」というカトリックの女子修道会です。この修道会は、フランス人の修道女、シスター・マリ・ド・ラ・パシオンによって1877年に設立され、1898年(明治31年)、熊本のハンセン病患者の世話をするために5名のシスターを日本にはじめて派遣しました。以来、現在に至るまで、日本で約300名のシスターが教育や福祉の分野で活動を続けています。

1946年(昭和21年)、マリアの宣教者フランシスコ修道会は、第2次世界大戦直後の日本の復興には女子教育が必要であると考え、戦争で大きな痛手を受けた、海星女子学院の前身である、高等聖家族女学校の経営を引き継ぎ、1951年、学校法人海星女子学院を設立し、現在のこの地に、小学校、中学校、高等学校を設置しました。そして、1955年に、短期大学、1965年に、神戸海星女子学院大学文学部英文学科、仏文学科が設置されました。以後、いくつかの変遷を経て、2014年に、現代人間学部英語観光学科、心理こども学科となり、2015年12月に大学創立50周年を迎えました。

次に、本学の建学の精神と「KAISEIパーソナリティ」についてお話ししたいと思います。本学の設立母体、マリアの宣教者フランシスコ修道会の創立者シスター・マリ・ド・ラ・パシオンは、「真理と愛に生きる」という言葉を胸に、生涯を教育と福祉の奉仕活動に捧げました。シスター・マリ・ド・ラ・パシオンの精神を受け継ぎ、本学は、建学の精神を「真理と愛に生きるというキリスト教的価値観に基づき、人を支え、社会に奉仕する女性の育成を目指す」としています。「真理と愛に生きる」という真理とは、神の言葉、すなわち、イエス・キリストの言葉です。そして、愛は、キリスト教で最も大切なことであり、キリスト教をひと言で表すと、愛になります。

それでは、愛とは、どのようなことを指すのでしょうか。親子間の愛、夫婦間の愛など、私たちは、身近な人に対する愛は、すぐに思い浮かべることができるでしょう。けれども、キリスト教の愛は、それだけにとどまりません。自分の知らない人をも愛することをいうのです。皆さんは、自分の知らない人を愛するなんてできるだろうか、と思われるかもしれません。ノーベル平和賞を受賞した、マザー・テレサは、「愛の反対は、憎しみではありません。愛の反対は、無関心です」と述べています。つまり、愛するということの一つの形として、人に関心を持つ、思いやる、ということが挙げられるでしょう。

人を思いやることは、たとえ、その人を知らなくてもできるでしょう。たとえば、皆さんが、肌寒い日の朝、電車に乗るために駅のホームに上がってくると、そこに、パジャマ姿で、つっかけをはいたお年寄りが立っているのを見かけるとします。手には何も持っていません。皆さんは、どうしますか?その時にお年寄りに「どうされましたか?」と声をかける、これは、知らない人に対する思いやりであり、愛の一つの形です。

また、本学には、「海星海外協力金」と呼ばれるものがあり、ゼミやクラスの会計係がゼミあるいはクラスの一人ひとりから一学期に一度、500円ずつ集めています。集まったお金は、年度末に、教員や職員から集められたお金と合わせて、日本キリスト教海外医療協会、日本国際ボランティアセンター、国境なき医師団などに送金しています。一学期に一度だけとはいえ、学生にとって500円は少し「痛い」金額ではないかと思います。50円や100円ならば、楽に出せる金額でしょう。けれども、500円は、大金ではないにせよ、やはり、何かを少しがまんして出す金額です。皆さんが、学内に掲示されている海星海外協力金の送金先についてのポスターや送金先から送られてきたお礼状を読んで、500円を払うときに、シリアや南スーダン、イエメンやイラクなど、紛争、飢餓、貧困、病気、自然災害などで様々な形の援助を必要としている国々やそこに暮らす人々、特に弱い立場にいる女性や子どもたちのことに思いをはせるのは、知らない人に対する、愛の形と言えるでしょう。

本学では、卒業生全員に求められる共通の人格的素養として「KAISEIパーソナリティ」を定めています。この「KAISEIパーソナリティ」についても、お話ししたいと思います。お手元の「KAISEIパーソナリティ」と書かれたカードをご覧ください。「海星」をアルファベットでつづったときの6つの文字一つ一つに意味を持たせたものが「KAISEIパーソナリティ」(海星が育てる人格的素養)です。KAISEIのKは、「Kindness 思いやり」、A は、「Autonomy 自律」、Iは、「Intelligence 知性」、Sは、「Service 奉仕」、Eは、「Ethics 倫理」、Iは、「Internationality 国際性」を表しています。本学に入学した学生に、この6つを併せ持った女性、すなわち、「他者を思いやり、自己を律し、知性と奉仕の精神に富み、正しい倫理観と、豊かな国際感覚をもった女性」に成長してほしいという本学の願いを込めたものが、この「KAISEIパーソナリティ」です。この中の最初に「Kindness思いやり」が来ているのは、偶然とはいえ、大きな意味があると思っています。それは、この「思いやり」こそが、本学の建学の精神にある「真理と愛に生きる」の愛の一つの形であるからです。この「思いやり」があってこそ、ほかの5つ、すなわち、「自律」「知性」「奉仕」「倫理」「国際性」が生きてくると思うのです。たとえば、3番目の「Intelligence知性」ですが、知性はよいことにも、悪いことにも使うことができますが、思いやりを伴う知性こそが、本学が育てる知性です。また、その次の「Service 奉仕」について考えてみましょう。本学の設立母体であるマリアの宣教者フランシスコ修道会は、教育と福祉の奉仕活動を続けている会です。したがって、「奉仕」もまた、「KAISEIパーソナリティ」の構成要素の中で非常に大切なものですが、「思いやり」のない奉仕は、真の奉仕とは言えないでしょう。最後の「Internationality 国際性」にしても同じことが言えます。このように、「Kindness思いやり」が「KAISEIパーソナリティ」の最初に来ていることは、とても意味深いことであると思います。

本学には、「人を支え、輝く。」という標語(スローガン)があります。皆さんは、これからの4年間で「KAISEIパーソナリティ」を身に付け、英語観光学科では、英語、観光、あるいは英語教育について、心理こども学科では、心理学、保育、幼児教育、あるいは児童教育について学びますが、本学では、皆さん一人ひとりがここで身に付けたことを、社会に出て、人のために、人を支えるために使ってほしいと願っています。支える相手は、お客さんであったり、子どもや保護者であったりと、進路によって異なりますし、皆さんの年齢や生活環境の変化とともに支える相手も変わることがあるかもしれませんが、常に思いやりと奉仕の精神を持って、人を支え、そこに喜びを感じ、輝いてほしいと思います。

もう一つ、本年度の聖書のことばについてお話しさせてください。本学では、毎年、その年度の聖書の言葉を選び、学内に掲示しています。本年度の聖書の言葉は、さきほど代表の方が朗読してくださったマタイ福音書の第7章12節にある「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」という言葉です。この言葉は、「自分の周りの人に関心を持ちなさい。そして、他の人の立場に立ち、もし自分がその人であれば、どのような気持ちでいるか、どのようなことを望むかを考え、自分であればこうしてほしいと思うことをその人にしなさい」という意味であると思います。皆さんは、これから本学で新しい友人を作っていかれると思いますが、そのような中で、たとえば、いつも教室に一人でポツンと座り、誰とも話をしない人がいることに気づき、その人のことが気になり始めたとします。気になってはいるけれども、どうしてよいかわからないときは、「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」という本年度の聖書の言葉を思い出して、自分がその人であったら、今どのように感じているだろうか、どのようにしてほしいだろうか、と想像してみてください。自分であれば、誰かに笑顔で声をかけてほしい、と思うのであれば、その人に笑顔で声をかけてみてください。自分がしてほしいと思ってしたことと、相手が実際にしてほしいと思っていたことには、もしかしたら、ずれがあるかもしれません。けれども、ここで大切なことは、「あなたのことを気にかけていますよ」という思いを相手に伝えることなのです。先ほど、マザー・テレサの「愛の反対は、無関心である」という言葉や「KAISEIパーソナリティ」についてお話ししましたが、人に関心をもち、人の立場に立って考え、自分が人にしてもらいたいと思うことを人にするというのは、「KAISEIパーソナリティ」の最初にある「思いやり」という、愛の一つの形と言えるでしょう。

ここまで神戸海星女子学院大学についてお話ししましたが、あと一つ、私からのメッセージをお伝えしたいと思います。皆さんは、今日から大学生です。クラブ活動やアルバイトなど、様々なことを楽しんでほしいと思いますが、大学に進学したからには、学生生活の中心となる学業において自分の持っている能力に挑んでほしい、チャレンジしてほしいと思います。少し高い目標を決めて、それに向かってベストを尽くすことがチャレンジです。具体的にどのようにチャレンジすればよいかというと、皆さん自身が、手始めに、1つか2つ、特にこだわりを持ってがんばろうと思う科目を決めて、その科目でベストを尽くしてみてください。チャレンジの過程には、乗り越えるべき壁があり、ベストを尽くせば尽くすほど、その壁がどんどん高くなっていきます。それは、皆さんの目指すものが、どんどん高くなっていくからです。高くなっていく壁を乗り越えるのは大変なことで、くじけそうになったり、失敗したりすることもあるでしょう。そのような中で、助けが必要になったときは、これも、さきほど代表の方が朗読してくださったマタイ福音書にある「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。」という言葉を思いだして、先生方の研究室のドアをたたいてください。先生方は、皆さん一人ひとりが研究室のドアをたたく前から、皆さんがよいチャレンジをしているかどうか、見守ってくださっているはずです。ときには、すぐに手を差し伸べたいと思われても、皆さんの成長を願って、あえてそっと見守られることもあるかもしれません。けれども、皆さんがドアをたたいたときは、喜んで開き、喜んで助けてくださることでしょう。そして、高くなった壁を、ベストを尽くして、苦労して乗り越えたとき、皆さんは、この上ない達成感を味わうことができるでしょう。それが、チャレンジの醍醐味です。この醍醐味を知ると、ほかの科目もがんばってみようと思うようになるでしょう。そのようにして、一つ一つ、高い壁を乗り越えるたびに、皆さんは確実に自分の能力を伸ばし、成長していかれることと思います。

最後になりましたが、皆さんのこれからの4年間が、心身ともに健康に恵まれた充実したものとなりますよう、神様のお導きをお祈りし、皆さんとの、この出会いに心から感謝して、私の式辞とさせていただきます。

平成30年4月2日
神戸海星女子学院大学 学長 小野 礼子