学長メッセージ

2019年度 入学式 学長式辞

青空のもと、本学の桜も美しく咲き、今日の日を祝ってくれているように思います。新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。ご家族の皆様、誠におめでとうございます。

新入生の皆さんは、今日から、この神戸海星女子学院大学の一員となられます。そこで、神戸海星女子学院大学がどのような大学であるかを、本学の成り立ち、本学の建学の精神と「KAISEIパーソナリティ」、本年度の聖書の言葉、の順にお話しし、最後に私からの皆さんへのメッセージをお伝えしたいと思います。

まず、本学の成り立ちについてお話しいたします。本学は、キリスト教の、カトリックの大学です。本学の設立母体は、「マリアの宣教者フランシスコ修道会」というカトリックの女子修道会です。この修道会は、フランス人の修道女、シスター・マリ・ド・ラ・パシオンによって1877年に設立され、1898年(明治31年)、熊本のハンセン病患者の世話をするために5名のシスターを日本にはじめて派遣しました。以来、現在に至るまで、日本で約300名のシスターが教育や福祉の分野で活動を続けています。

1946年(昭和21年)、マリアの宣教者フランシスコ修道会は、第2次世界大戦直後の日本の復興には女子教育が必要であると考え、戦争で大きな痛手を受けた、海星女子学院の前身である、高等聖家族女学校の経営を引き継ぎ、1951年、学校法人海星女子学院を設立し、現在のこの地に、小学校、中学校、高等学校を設置しました。そして、1955年に、短期大学、1965年に、神戸海星女子学院大学文学部英文学科、仏文学科が設置されました。以後、いくつかの変遷を経て、2014年に、現代人間学部英語観光学科、心理こども学科となり、2015年12月に大学創立50周年を迎えました。

次に、本学の建学の精神と「KAISEIパーソナリティ」についてお話ししたいと思います。本学の設立母体、マリアの宣教者フランシスコ修道会の創立者シスター・マリ・ド・ラ・パシオンは、「真理と愛に生きる」という言葉を旨に、生涯を教育と福祉の奉仕活動に捧げました。シスター・マリ・ド・ラ・パシオンの精神を受け継ぎ、本学は、建学の精神を「真理と愛に生きるというキリスト教的価値観に基づき、人を支え、社会に奉仕する女性の育成を目指す」としています。「真理と愛に生きる」という真理とは、神の言葉、すなわち、イエス・キリストの言葉です。そして、愛は、キリスト教で最も大切なことであり、キリスト教をひと言で表すと、愛になります。

それでは、愛とは、どのようなことを指すのでしょうか。親子間の愛、夫婦間の愛など、わたしたちは、身近な人に対する愛は、すぐに思い浮かべることができるでしょう。けれども、キリスト教の愛は、それだけにとどまりません。自分の知らない人をも愛することをいうのです。皆さんは、自分の知らない人を愛するなんてできるだろうか、と思われるかもしれません。ノーベル平和賞を受賞した、マザー・テレサは、「愛の反対は、憎しみではありません。愛の反対は、無関心です」と述べています。つまり、愛するということの一つの形として、人に関心を持つ、思いやる、ということが挙げられるでしょう。

人を思いやることは、たとえ、その人を知らなくてもできるでしょう。たとえば、皆さんが、駅のあるビルの前に立っているとします。すぐ近くには信号のある横断歩道があり、その横断歩道を渡ろうと、向こうからお年寄りが手押し車を支えにして半歩ずつ、とてもゆっくりと歩いてきます。そのお年寄りがようやく横断歩道の真ん中あたりまで来た時に信号が赤に変わってしまいました。信号待ちで停車していた車も発進せずにお年寄りが渡りきるのを待っています。そのお年寄りの様子を見て、皆さんは、どうしますか?その時に車が止まっているのをしっかりと確認して、お年寄りのもとに行き、「一緒に渡りましょうね」と言って、お年寄りの腕にやさしく手を回して一緒に歩き、横断歩道を渡り切ったところで、「駅にいらっしゃるのですか?あそこのエレベーターのところまでご一緒しましょうか?」と話しかけてみる、これは、知らない人に対する思いやりであり、愛の一つの形です。

また、本学には、「海星協力金」と呼ばれるものがあり、ゼミやクラスの会計係がゼミあるいはクラスの一人ひとりから一学期に一度、500円ずつ集めています。集まったお金は、年度末に、教員や職員から集められたお金と合わせて、日本キリスト教海外医療協力会、日本国際ボランティアセンター、国境なき医師団などに送金しています。また、昨年度は、2016年の熊本地震、2018年の大阪北部地震、西日本豪雨災害、北海道胆振東部地震の被災者支援にも海星協力金を使いました。一学期に一度だけとはいえ、学生にとって500円は少し「痛い」金額ではないかと思います。50円や100円ならば、楽に出せる金額でしょう。けれども、500円は、大金ではないにせよ、やはり、何かを少しがまんして出す金額です。皆さんが、学内に掲示されている海星協力金の送金先についてのポスターや送金先から送られてきたお礼状を読んで、500円を払うときに、スーダンや南スーダン、イラクやアフガニスタン、東日本大震災の被災地など、紛争、飢餓、貧困、病気、自然災害などで様々な形の援助を必要としている国や地域、そして、そこに暮らす人々、特に弱い立場にいる女性や子どもたちのことに思いをはせるのは、知らない人に対する、愛の形と言えるでしょう。

本学では、卒業生全員に求められる共通の人格的素養として「KAISEIパーソナリティ」を定めています。この「KAISEIパーソナリティ」についても、お話ししたいと思います。式次第の中に挟んであるカードの上にある「KAISEIパーソナリティ」をご覧ください。「海星」をアルファベットでつづったときの6つの文字一つ一つに意味を持たせたものが「KAISEIパーソナリティ」(海星が育てる人格的素養)です。KAISEIのKは、「Kindness 思いやり」、A は、「Autonomy 自律」、Iは、「Intelligence 知性」、Sは、「Service 奉仕」、Eは、「Ethics 倫理」、Iは、「Internationality 国際性」を表しています。本学に入学した学生に、この6つを併せ持った女性、すなわち、「他者を思いやり、自己を律し、知性と奉仕の精神に富み、正しい倫理観と、豊かな国際感覚をもった女性」に成長してほしいという、本学の願いを込めたものが、この「KAISEIパーソナリティ」です。この中の最初に「Kindness思いやり」が来ているのは、偶然とはいえ、大きな意味があると思っています。それは、この「思いやり」こそが、本学の建学の精神にある「真理と愛に生きる」の愛の一つの形であるからです。この「思いやり」があってこそ、ほかの5つ、すなわち、「自律」「知性」「奉仕」「倫理」「国際性」が生きてくると思うのです。たとえば、3番目の「Intelligence知性」ですが、知性はよいことにも、悪いことにも使うことができますが、思いやりを伴う知性こそが、本学が育てる知性です。また、その次の「Service 奉仕」について考えてみましょう。先ほどお話したように、本学の設立母体、マリアの宣教者フランシスコ修道会は、教育と福祉の奉仕活動を続けている会です。したがって、「奉仕」もまた、「KAISEIパーソナリティ」の構成要素の中で非常に大切なものですが、「思いやり」のない奉仕は、真の奉仕とは言えないでしょう。最後の「Internationality 国際性」にしても同じことが言えます。このように、「Kindness思いやり」が「KAISEIパーソナリティ」の最初に来ていることは、とても意味深いことであると思います。

本学には、「人を支え、輝く。」という標語(スローガン)があります。皆さんは、これからの4年間で「KAISEIパーソナリティ」を身に付け、英語観光学科では、英語、観光、あるいは英語教育について、心理こども学科では、心理学、保育、幼児教育、あるいは児童教育について学びますが、本学では、皆さん一人ひとりがここで身に付けたことを、社会に出て、誰かほかの人のために、人を支えるために使ってほしいと願っています。支える相手は、お客さんであったり、子どもや保護者であったりと、進路によって異なりますし、皆さんの年齢や生活環境の変化とともに支える相手も変わることがあるかもしれませんが、常に思いやりと奉仕の精神を持って、人を支え、そこに喜びを感じ、輝いてほしいと思います。

もう一つ、本年度の聖書のことばについてお話ししたいと思います。本学では、毎年、その年度の聖書の言葉を選び、学内に掲示しています。本年度の聖書の言葉は、旧約聖書の詩編55章23節にある「あなたの重荷を主にゆだねよ 主はあなたを支えてくださる。」という言葉です。この言葉に用いられている「主」とは、神様のことです。言い換えれば、「あなたの重荷を神様にゆだねなさい。神様はあなたを支えてくださる。」となります。「苦しい時の神頼み」ということわざがありますが、「あなたの重荷を主にゆだねよ」という言葉は、そのような意味ではありません。「苦しい時の神頼み」は、ふだんは神に対する信仰心を持たない人が、苦しいときにだけ神に祈って助けを求めようとすることを意味しています。それに対して、「あなたの重荷を主にゆだねよ 主はあなたを支えてくださる。」というのは、苦しいときだけではなく、うれしいときも、いつも主である神様に心を向けていなさい。うれしいときは、神様に感謝しなさい。苦しいときや困難なことがおとずれたときは、それを乗り越えるために精一杯努力しなさい。そして、あとは神様にお任せしなさい。神様が必ずあなたを支えくださいます。だから、決して、絶望してはいけません、という意味です。皆さんは、「あしあと」という詩を聞いたことがありますか。カナダ人のマーガレット・F・パワーズという人が作った詩です。この詩を読むと、神様がわたしたち人間を深く愛してくださっていること、そして、本年度の聖書の言葉「あなたの重荷を主にゆだねよ 主はあなたを支えてくださる。」の意味がよくわかると思います。ここで原題Footprintsという詩の日本語訳*を読みたいと思います。

 

あしあと

ある夜、わたしは夢を見た。
わたしは、主とともに、なぎさを歩いていた。
暗い夜空に、これまでのわたしの人生が映し出された。
どの光景にも、砂の上にふたりのあしあとが残されていた。
ひとつはわたしのあしあと、もう一つは主のあしあとであった。

これまでの人生の最後の光景が映し出されたとき、
わたしは、砂の上のあしあとに目を留めた。
そこには一つのあしあとしかなかった。
わたしの人生でいちばんつらく、悲しい時だった。

このことがいつもわたしの心を乱していたので、
わたしはその悩みについて主にお尋ねした。
「主よ。わたしがあなたに従うと決心したとき、
あなたは、すべての道において、わたしとともに歩み、
わたしと語り合ってくださると約束されました。
それなのに、わたしの人生のいちばんつらい時、
ひとりのあしあとしかなかったのです。
いちばんあなたを必要としたときに、
あなたが、なぜ、わたしを捨てられたのか、
わたしにはわかりません。」

主は、ささやかれた。
「わたしの大切な子よ。
わたしは、あなたを愛している。あなたを決して捨てたりはしない。
ましてや、苦しみや試みの時に。
あしあとがひとつだったとき、
わたしはあなたを背負って歩いていた。」

 

ここまで神戸海星女子学院大学についてお話ししましたが、あと一つ、私からのメッセージをお伝えしたいと思います。皆さんは、今日から大学生です。クラブ活動やアルバイトなど、様々なことを楽しんほしいと思いますが、大学に進学したからには、学生生活の中心となる学業において自分の持っている能力に挑んでほしい、チャレンジしてほしいと思います。少し高い目標を決めて、それに向かって全力を尽くすことがチャレンジです。具体的にどのようにチャレンジすればよいかというと、皆さん自身が、手始めに、1つか2つ、特にがんばろうと思う科目を決めて、レポートであれば、徹底的に調べ、ああでもない、こうでもないと、粘り強く考え、時間をかけて自分のことばでまとめる、発表であれば、内容にはもちろん、声の大きさや表情にもこだわり、何度も何度も練習を繰り返して本番に臨む、といったことをして、全力を尽くしてみてください。チャレンジの過程には、乗り越えるべき壁があり、全力を尽くせば尽くすほど、その壁がどんどん高くなっていきます。それは、皆さんの目指すものが、どんどん高くなっていくからです。高くなっていく壁を乗り越えるのは大変なことで、くじけそうになったり、失敗したりすることもあるでしょう。そのような中で、助けが必要になったときは、さきほど代表の方が朗読してくださったマタイ福音書にある「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。」という言葉を思いだして、先生方の研究室のドアをたたいてください。先生方は、皆さん一人ひとりが研究室のドアをたたく前から、皆さんがよいチャレンジをしているかどうか、見守ってくださっているはずです。ときには、すぐに手を差し伸べたいと思われても、皆さんの成長を願って、あえてそっと見守られることもあるかもしれません。けれども、皆さんがドアをたたいたときは、喜んで開き、喜んで助けてくださることでしょう。そして、高くなった壁を、全力を尽くして、苦労して乗り越えたとき、皆さんは、この上ない達成感を味わうことができるでしょう。それが、チャレンジの醍醐味です。この醍醐味を知ると、ほかの科目もがんばってみようと思うようになるでしょう。そのようにして、一つ一つ、高い壁を乗り越えるたびに、皆さんは確実に自分の能力を伸ばし、成長していかれることと思います。

最後になりましたが、皆さんのこれからの4年間が、心身ともに健康に恵まれた充実したものとなりますよう、神様のお導きをお祈りし、皆さんとの、この出会いに心から感謝して、私の式辞とさせていただきます。

平成31年4月1日
神戸海星女子学院大学 学長 小野 礼子

 

*日本語訳 松代恵美